サブカテゴリ:スペイン口福の裏通りピレネーの生ハム

つい先日のこと、友人に誘われるまま逢坂剛さんの「わが青春のスペイン」と題した講演会へ行って来た。一本のギターとの出会いが、やがてフラメンコとの出会いへと繋がり、独りスペインに向かった経緯。セビーヤに向かう列車の中で出会った親切なスペインのオヤジさん。その孫娘との今に続く交流や、北方謙三さんが逢坂さんの手紙をコルドバまで届けたこと。
カディスのタブラオで見た小島章司さんのステージ。「カディスの赤い星」が世に出るまでの裏話など、楽しい話が満載だった。
講演会が終わって、友人数人で軽くつまんで帰ろうと話が決まった。いつものパターン。少し知っている近くの店に向かったが生憎の休業日。遅い時間でもあり、そこから近いスペイン・バルに入ったのだが、メニューを見てフリーズしてしまった。
人数もあることだし、シェリーをボトルで、という友人を制してカヴァにした。シェリーは我々オジさんには、チト厳しいお値段だった。生ハムをという友人たちを再び制してイベリコの盛り合わせにする。しかし、しかし・・・・。
そのバルで我々の会話は弾まなかった。オリーブ一皿と小ぶりのトルティーヤの他にタパスを注文する気力は萎えていた。うまい、まずいはともかく、場所柄もあろうが高いのである。それでも客はいたから、世間はフトコロ温かなひとがたくさん居るという事だ。この店が東京におけるスペイン・バルの標準とは思いたくないが、いずれ、流行が収まれば淘汰されてゆく運命だろう。ただ、その時スペイン・バルの評判を落としてしまいたくない。そう思うのは私だけではあるまい。
その夜、友人は駅前のコンビニでおにぎりを買って帰り、そのおにぎりがうまかったと、後日、しみじみ述懐したのであった。
その店で、出てきたイベリコの盛り合わせを見た友人は、こりゃぁピレネーで食べた生ハムの対極だね。と言ったものだが、それは3年ほど前、二人でカタルーニャ・ロマネスクの撮影を目的にピレネーの山中をうろついていた時のこと。レスタニーの教会近くのバル&レストランで、メロン・コン・ハモンを頼むことにした。私は知ったかぶりで彼にアドバイスをしたもんだ。
「三日月に切ったメロンに生ハムが載っていて、その塩味と香りがメロンの味と巧くブレンドしている絶品ですよ。ただ、この値段じゃ、あまり期待できませんね」
ところが、出てきた皿をみてビックリ。二つに割った完熟メロンに載った生ハム。さらにメロンの周りにも・・・。写真を見ていただければ一目瞭然なのだが、かなり大振りのメロンであったことはつけ加えておきたい。
物事を単純に比較は出来ない。東京都の繁華街とピレネーの村の違い。しかもハムはイベリコでも、ハブゴでも、パタ・ネグラでもない、ありきたりの生ハム。だが、おいしくて価格もリーズナブルであれば、何の不満があろうか。
クリネックス顔負けの薄切り技術は評価しても、これってピンク色のサランラップ?と見間違えそうな生ハムのお皿を出されても、感動とはほど遠い。サイフばっかり気遣って、楽しい時間は過ごせない。
東京(のほんの一部しか知らないが)には、他にいいスペイン風のバルがけっこう多い。ぜひ、楽しいスペイン・バルを見つけて、贔屓にしたいものだ。そうでしょ。
スペイン文化のフリークとしては、スペイン風という看板だけで手放しで喜んでしまいがち(エッ、私だけ?)だが、かえってスペインのバル文化を踏みにじることにつながる。
と、まぁエラソーなことを感じた夜でありました。
このレスタニーのレストランでのデザートはトゥロンのアイスクリーム。暑い日という条件を割り引いても、何とおいしかったことか。ハモン・・・といいトゥロン・・・といい、幸せなピレネーの昼食でありました。
で、トゥロンといえば、マラガのラリオス通り(広い遊歩道になっている)に人気の専門店があります。マラガに行く機会がありましたらぜひ寄ってください。ただ甘いだけ、と思っているあなた、認識不足ですよ。



<文・写真 ぺぺ・デル・カンポ>


