サブカテゴリ:スペイン口福の裏通りエル・ブジ症候群よいつまで

グジグジと誰にともなく言い訳しながら、今年も「サン・フェルミン」へ行って来てた。
しかし首班格のカルロスが3年前に牛の角にかかって大怪我(本人は名誉のつもり)をしてから、全体に仲間たちのトーンが落ちた気がする。ま、トシってことなんだけどね。
でもって今年は早めにお祭りを切りあげ、某巡礼を追ってサアグンまで走り、夕食をご馳走になり、翌朝ビルバオに向かい写真を撮った。
この街はグッケンハイム美術館の完成以来、世界の注目を集める有名建築家のショーケースのようだ。次に、その美術館を手がけたフランク・ゲーリーによるマルケス・デ・リスカルのホテルも取材しようと、アラバ県のエルシエゴにあるホテル&ボデガへと足を伸ばした。足のマメが痛かった。
スペイン最後の昼食はリオハ・アルタの中心アロでとった。アユンタミエントの広場から教会に向かう途中にある小さなレストラン。入り口はまぁ何処にでもある小さなバルで、仕切りの奥はちょっとシャレたコメドールになっていた。この日のメヌーからメネストラとロモを選ぶ。
赤ワインにガセオサを加えて一杯やり、まず息を整えた。最初の皿は生ハムが乗っかったメネストレ、薄味の野菜にハムの塩味がいい具合だ。そしてメインの「リオハ風ロモ」、好物の赤ピーマンがのっていてうれしいのだが、その上に3種のサルサがかかっている。フルーツ・ベースでやたらとくどい。ああぁぁロモがだいなし。そういえば四角い白いお皿だ。
白くて四角いお皿といえば、創作料理の象徴のように感じるのは私だけか?
どうやら、世界一予約が難しいと話題の「エル・ブジ」が話題になって以来、スペインの若きシェフたちはこぞって新しい料理に挑戦し、今ではかなりの田舎町でもオッと驚くようなオシャレな料理を出すレストランが増えた。これはなかなかいい現象である。この新しい潮流は泥臭いと思われがちだったスペイン料理の世界に一石を投じたと言えるだろう。
しかし問題はその味と画一性だ。マヨルカもアビラもバルセロナもリオハも同じような店のたたずまい、加えて申し合わせたように白くて四角いお皿。・・・日本にもあるけど。
流行だと言ってしまえばそれまでだが、私はこれを「エル・ブジ症候群」と呼ぶ。
ビルバオでもロモを食べた。ビルバオといっても街の中心から大きく外れ、ビルバオ河と運河に挟まれたリベラと呼ばれる半島状の再開発予定地区。対岸は鉄屑などの処理工場が並ぶ。そこの「バル・ベゴーニャ」は、6人が座れるテーブルが二つあるだけで混んでいた。何とか相席をさせて貰った。常連とおぼしき向かいの二人組みが、軽い塩味だけのロモをうまそうに食べていた。
当然わたしもそれに倣った。文句なくうまかった。先に食べ終えた二人は食後のコーヒーを。一人はアグアルディエンテをたっぷり加えたのだが、そのコーヒー・マグを抱えたまま居眠り。と、オヤジが孫を抱っこして二人の後ろから「この子はサッカー選手だぞ!」とばかり、孫の足でもう一人の頭にケリを入れた。彼は、おっ、やられた!と、のけぞって見せた。
なんとものどかな「バル・ベゴーニャ」の昼時であった。そして食事は最高だった。私には。
新しい料理、新しい味への挑戦は大事なことだ。しかし、見た目ばかりにとらわれたり、やたらと手を加えればいいと言うものでもなさそうだ。伝統の味には長い時代を経て護られ育まれた良さがある。それを超えるのは並々ならぬことだと思う。流行とはいずれ廃れ忘れられてゆくものだろう。
エル・ブジ症候群がいつまでつづくのか。私には気がかりなのだ。
<文・写真 ペペ・デル・カンポ>


