サブカテゴリ:スペイン口福の裏通りガスパチョはスープじゃない!?

フライパンとまで揶揄される暑さのアンダルシアの夏。食欲も急激に減退する。だが、過酷なアンダルシアの夏を乗り切る名物料理、ガスパチョ・アンダルスがある。
トマトやガーリック、ピミエント、オリーブオイルなどを使った冷たいスープは、元気をくれる夏の定番料理として、パエージャと並ぶスペインの代表料理だ。
レストランや家庭によってサーブのしかたはさまざまだが、ニンニクの利いた冷たく濃~いトマト・ベースのスープに細切れの新鮮野菜やパンが添えられ、これらを好みで加えて食す。
ところが、ガスパチョとは実は煮込み料理だったと言うのだ。
ネタ元はドン・キホーテ。騎士道小説の読み過ぎでヘンになり、すっかり騎士になりきり、駄馬ロシナンテに跨り、村の百姓サンチョ・パンサを従者にしたてて冒険の旅にでる。
いきなり出遭った風車を巨人と見て突進する・・・誰知らぬお話だ。しかし聖書に次ぐ世界のベストセラーといわれる本も、どうやら最後まで読み通した人は案外少ないらしい。
実はこの小説、深い含蓄に富んだお話なのだが、その後編に、サンチョ・パンサが念願かなって島の領主になるエピソードがある。
しかし「あれはイケナイ」「こんなもの食べるものではない」と、医者にさんざん食事制限をされ、「めいめい生まれたままの仕事をしているのがいちばん似合うってことでがす。・・・わしを飢え死にさせようとする意地の悪い医者から、ひどい目にあっているよりか、ガスパーチョをたらふく飲みてぇでがす」と言って、領主を辞める宣言をする。
このサンチョ・パンサ、食べることと金言・格言をしゃべりまくることでドン・キホーテをうんざりさせるのだが、ガスパーチョのセリフが不自然なのだ。でもって、バルセロナの著名な料理研究家ルイス・ベトニカさんの著「スペインの地方料理」を開くと、ガスパチョ・マンチェゴはチキン、ウサギ、ペルディスなどを使った煮込みとあった!
サンチョが領主の座を捨ててまで求めたのはこれに違いない。
と、まぁ、ドン・キホーテにはこれでもかとばかり、食べる話が登場する。ついでながらムルシア風はメロ(スズキの仲間)の頭や切り身、玉葱などの煮込み。メリメの「カルメン」には「ガスパッチョという唐辛子を入れたサラダのようなもの」と出ているのだ。
所変われば・・・なのである。

ぺぺ・デル・カンポ 文・写真


