サブカテゴリ:シェリーを造る人笑顔がフロール

フアン・ホセ・メサはラフなセーター姿で、庭の大きな木の影にあるラボラトリーから出てきた。にこにこと、温かい笑顔で、大学の研究室の誰かさんのような、社会人と学生の間のような雰囲気がある。彼は1821年創業で、サンルーカル・デ・バラメダ(略してサンルーカル)最大のボデガ「ボデガス・バルバディーリョ」の醸造家だ。
ボデガは大西洋、グアダルキビール川、そして対岸に広がる世界自然遺産「ドニャーナ国立公園」を見下ろす丘の上にある。なかでも1876年に建てられた「アルボレディーリャ」という名の、天井が12.5メートルもあるボデガはマンサニーリャの熟成にとっては、素晴らしい条件にある。大西洋から吹いてくるしっとりと涼しい風をまえの障害がなく受けられるため、フロールが快く生育するのに必要な、適度な温度と湿度と換気の状況が整っているからだ。
フアン・ホセは、カディス大学で微生物学を学んだ後、分子生物学を研究し、フロールを形成する酵母をテーマとして博士論文を書いた。その間ヘレスのボデガ「サンデマン」とフロールの共同研究もしたという、いわばフロールの専門家だ。
マラガのボデガ、「ロペス・エルマーノス」でも2年半にわたって経験を積んだ。ここ「バルバディーリョ」は5年になる。「いろいろなところで働くといい経験になる」という。
だが、彼のテーマはフロールだ。フロールの質問をするとうれしそう。そこで常々気になっていた、「どうしてフロールは浮き上がってくるの?」を聞いてみた。
「フロールはワインの発酵に関与する酵母なんだ。普通の酵母は発酵が終わると死んで沈んでしまう。けれどもフロールの酵母はアルコール度が上ってくると、それに対応できる形態に変化し始める。そしてワインの中の酸素を取り入れるようになり、沈まないで上に昇っていって、要するに呼吸しながら生きくようになるんだ。」とのこと。
それで、「どうしてずっと浮いていられるの?フロールはワインより軽いの?」と聞くと、「浮いているのは、酵母の核の周囲のたんぱく質が隣の核の周囲のたんぱく質と結びついてパラシュート状になっているからなんだ。核一つでは浮いていられない。沈んでしまう。沈んでいくところを見たことはないけどね。」とのこと。
ホアン・ホセの研究は続く。彼はラボラトリーに似合っているかもしれない。
“フロールの膜はパラシュート”
ちなみに、彼はサンルーカルではなくヘレスの生まれだ。

<あけひよしこ>


