サブカテゴリ:シェリーを造る人ラファエルおじさん

どこにでもいそうな、小柄なスペイン人のおじさん、ラファエル・ガルシアは今70歳。いつもニコニコしているけれど、ことワインになると、キラッと目を輝かせて、素晴らしいパワーで、熱く熱く語り始める。
ラボラトリーも兼ねている彼のオフィスには、いつも白い大きな紙が掛けてあって、テーマごとに自分の理論を図解付きで、きれいにまとめて清書している。
けれども、何か質問すると、嬉々として鉛筆を握ると、せっかく出来上がりつつあった清書の紙の白いところに、ゴチャゴチャとイラストやら、記号やらを書き込んでしまうので、こちらのほうがハラハラする。彼は、それを後で丁寧に消しゴムで消すのだが・・・。
ラファエルおじさんが働いているのはアルバロ・ドメックというボデガ(酒造会社)で、来てから9年になる。ティオ・ペペで有名なボデガ、ゴンサレス・ビアス社に45年間勤めて退職した後に引き受けた仕事なので、今は時間の規定はなく、10時過ぎに来て2時には帰るという、自由な働き方をしている。けれどもシェリーのもとになるモストの買い付けから熟成、出荷まで、シェリーの管理は一切彼の手にゆだねられているので、毎日一度は顔を出す。
アルバロ・ドメック社は、もともとピラール・アランダというアルマセニスタ(シェリーの熟成をするが製品を出荷しない業者)だったボデガを、ドメック社の創設ファミリーが買ったものだ。ピラール・アランダはかつてエミリオ・ルスタウ社のアルマセニスタ・シリーズで販売されていたもので、ワインの品質はお墨付き。
「ワインは子供のようなものだから、よく世話をしなくちゃいけないんだ。いい教育をしないとね。」
ラファエルおじさんは父親がゴンサレス・ビアス社に勤めていたことから、14歳のときに同じボデガで働き始めた。その後17歳でマドリッドのブドウ栽培とワイン醸造の専門学校に入って3年間勉強したが、これは当時としては先進的だったそうだ。ということでインテリ派カパタスの走りといえる。
ここでカパタスという言葉をちょっと説明。カパタスというのは白水社の辞書によると現場監督。ワインの世界ではボデガで働く職人たちのボスと言っていいだろう。ワインの面倒を見るのが仕事だ。かつてのカパタスは経験と勘でこなしてきた。それをラファエルおじさんは科学的根拠に基づいて行うようになったわけだ。
約55年間もワインと共に生きてきた彼には、知識と経験と勘、そしてたゆまぬ情熱!がある。

<あけひ>


